(医療法人弘愛会 広報誌ふれあい44号〜51号より転載)

弘前には形成外科を標榜している病院や医院は少ないので、形成外科を受診された事が無いという方もおられると思いますが、形成外科はどのような診療を行っているのか、4月より形成外科の診療を担当されている樋熊医師にお聞きします。

ほくろについて

はじめまして。
今年4月より、当院で形成外科の診療を担当している樋熊と申します。
形成外科とはどのような診療科目なのか、どのような疾患を扱うのか…、などについてこの広報誌に連載していきます。
難しい医療用語はできるだけ使わず、はじめての方にも分かりやすい言い回しを心がけてまいりますので、是非お読み下さい。




(気になるところを相談したところ、優しくわかりやすく説明してくださいました。)


形成外科では、皮膚や皮膚の下にできる腫瘍に対する治療を行っています。
ほくろ・あざ・いぼ・粉瘤・脂肪腫などの良性腫瘍から皮膚がんも含めた悪性腫瘍まで、様々な腫瘍を扱っています。
ほくろには、色々なタイプがあります。小さいもの、大きいもの、色の薄いもの、濃いもの、丸い形のもの、いびつな形のもの、徐々に大きくなるもの、盛り上がってくるものなど様々です。
目立つ場所にあって気になったり、大きくなってきて心配な場合には、小さな手術での治療や検査も可能ですので、お気軽にご相談ください。
体表面の良性腫瘍・粉瘤

 皮膚の表面にできる腫瘍にはさまざまな種類がありますが、 代表的な良性腫瘍の一つに粉瘤(ふんりゅう)があります。
これは皮膚の袋のような腫瘍で、中に皮膚から剥がれ落ちた垢などがたまって徐々に大きくなります。 丸い腫瘍の表面に小さな穴が開いていて、穴の部分が黒く見える場合もあります。
また、穴から粥状のものが出てきたり、少し臭いがしたりする場合もあります。痛みもかゆみもないため、 放置されることが多い腫瘍ですが、一度細菌感染を起こすと、大きく腫れて痛みを生じ、 膿がたまって破れたりすることもあります。





治療は手術での切除になります。
局所麻酔の手術で、30分程度で終わります。 細菌感染を起こしている場合には、一度切開排膿の処置を行い、落ち着いてからでないと手術は勧められません。
腫瘍が大きくなってしまってからでは、手術に時間がかかったり、 きずあとが大きくなりますので、気になる場合には早めに受診をしましょう。
体表面の良性腫瘍・脂漏性角化症

 年齢が進んでくると、皮膚の表面に増えてくる腫瘍の一つに、 脂漏性角化症があります。黒色〜茶褐色の腫瘍で、いぼのように徐々に大きくなります。 表面は平坦なものからガサガサと角化しているものまで様々です。 主に頭、顔、頚部、体幹に発生し、手のひらや足の裏には出ません。 表面がかさぶたのようにはがれて取れることもあります。







 隆起してくると着替えの時に引っかかるようになったり、かゆみの症状が出たり、 ついつい触ってしまい、浸出液が出るようになって受診する方を多く見かけます。 頚部に小さいものが多発して気になって受診する方もいます。  自然になくなることはあまり期待できないため、気になる場合には局所麻酔の手術で切除します。 小さくて根元が細いタイプのものは、少しチクッとしますがハサミで切除可能です。  皮膚がんの中にも黒色に隆起してくるタイプのものがあるため、急に大きくなったり、 浸出液を認めるようになった場合には、早めの受診をお勧めします。
体表面の良性腫瘍・眼瞼黄色腫

 上まぶたの内側寄りに、黄色の扁平な皮膚腫瘍を生じることがあります。 これは眼瞼黄色腫と呼れる腫瘍です。両側のまぶたや下まぶたに生じる場合もあります。
 高脂血症が原因と言われていますが、高脂血症がなくても生じる人もいます。 高脂血症の治療を行うことで自然軽快すると言われることもありますが、実際にはなかなか消失しません。 目立つ場所に生じるため、気にしている方が多いようです。
まぶたの皮膚は比較的きずあとの目立ちにくい場所であるため、気になる場合には手術をお勧めします。 小さいものであれば局所麻酔で切除可能です。 大きくて切除後に直接縫合できない場合には、まぶたの皮膚に少し切れ込みを入れてずらして縫合するなど、 工夫が必要になることもあります。





 高脂血症の治療を行わずに切除すると再発の可能性もあります。 当院では高脂血症の治療も並行して行うことができますので、気になる場合には一度ご相談ください。


傷あとについて

 みなさんは、ケガをしたときに、傷あとが残る場合と残らない場合があることを不思議に思ったことはありませんか?
 皮膚は薄い表皮と、その下の真皮という厚みのある構造からできています。
すり傷のような浅い傷は、表皮細胞がけずれてしまった状態ですが、真皮の中に残った毛穴や汗腺などから表皮細胞が再生して傷が治ります。
この場合には傷あとは残らず、見た目も元の状態に戻ります。しかし、切り傷などのように真皮の深いところや、その下の脂肪組織にまで傷が及んだ場合は、治る過程で瘢痕と呼ばれる組織が出来て傷あとになります。
このため、すり傷でも部分的に深い部分があると、その部分だけ傷あとが残る場合があります。また、深い傷でもきちんと縫合処置を行うことで、傷あとを細く落ち着けることができます。






 色々な原因で傷あとが残ってしまった場合でも、早い時期であれば最終的に目立たないように治療を行う事が可能です。
小さな傷あとでも気になる場合にはぜひご相談ください。


傷のひきつれ(瘢痕拘縮)

 今回は傷のひきつれについてお話しします。ケガや手術で傷あとが残った部分は、最初の数ヶ月は傷に沿って硬くなり縮もうとする性質があります。
数ヶ月から1年程度かけて徐々に硬さや縮みは緩んでいきますが、体質やケガの程度、傷あとの残った部位によっては硬い傷あとが徐々に隆起して、肥厚性瘢痕やケロイドと呼ばれる状態になり、強いひきつれが残ってしまう場合があります。
この状態を医学的には瘢痕拘縮と呼びます。ひきつれのために関節の曲げ伸ばしが不自由になったり、まぶたや鼻、唇などの変形を起こしたり、かゆみや痛みの症状が強くなったりと色々な不自由が出てきます。
一番大切な事は、強いひきつれになる前に予防的に治療を行うことです。傷あとが残った場合、数ヶ月間は定期的に傷あとのチェックをします。ひきつれが起こりそうな気配があれば早めに治療を行う事で、強いひきつれを予防できます。





 また、ひきつれがすでに生じている場合でも、テープによる治療や注射、手術などで症状を改善できます。
症状を抱えて困っている方は、ぜひ一度受診をしてみてください。


熱傷(やけど)について

 やけどは、医学的には熱傷と呼ばれます。
アイロンなどの過熱した個体・熱湯などの液体・着衣への引火や爆発などによる熱傷、それほど熱くない物でも長時間触れていたために生じる低温熱傷、化学薬品などが皮膚に触れて生じる化学熱傷など原因は様々です。
 寒い地域では冬になると石油ストーブやファンヒーターなどの暖房器具を使用するため、これが原因となる熱傷が増えます。
子供などが直接触れてしまう場合、灯油を給油する際に引火する場合、またストーブの上に置いてあったヤカンや鍋をひっくり返して受傷する場合などがあります。また、就寝時に湯たんぽが肌に触れていて低温熱傷を受傷される方も毎年たくさん見かけます。  





 受診される患者様の中には、暖房器具の周囲に柵を設置したり、給油時には一旦火を消すなどの対策で予防できた例もたくさんあります。
少しの注意で防げるケガであるということを皆さんに認識していただければと思います。
 次回は、熱傷の分類と治療についてお話ししたいと思います。


熱傷(やけど)について

 前回は熱傷についてお話ししましたが、今回は熱傷の深さによる分類と治療について説明します。
熱い物に触れたり、強い日焼けをした後で皮膚が赤くなりヒリヒリしている状態を1度熱傷といいます。
炎症を抑える軟膏で治療を行うことで、傷あとを残さずきれいに治ります。熱い液体がかかったり、ストーブに触れてしまった後などに、水疱(水ぶくれ)ができてしまった状態を2度熱傷といいます。
多めの軟膏で新しい皮膚が再生するよう治療を行いますが、治癒までに時間がかかると傷あとが残ります。
熱い物が長時間肌に触れていたり、着衣に引火するなどの原因で、皮膚が完全に障害された状態を3度熱傷といいます。
この状態から皮膚が再生することは期待できないため、手術が必要となります。





 多くの場合は全身麻酔で、障害された皮膚を切除し、体のほかの部分から皮膚を採取して皮膚移植を行います。
3〜4週間の入院が必要になります。熱傷では、受傷後早期からの適切な治療が傷の治りに大きく影響します。
当院には熱傷専門医がおりますので、熱傷を受傷した場合には程度にかかわらず、すぐに診察・治療を受けることをお勧めします。 


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